株式会社農業総合研究所

農業に情熱を

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BUSINESS REPORT VOL.07

農業に情熱を

国分グループ×農総研の対談

流通がつなぐ農産物の未来
~国分グループ×農業総合研究所~

物流業界の人手不足や人件費の上昇、エネルギー価格の高騰や急激な円安など、取り巻く環境が厳しさを増している食品流通業界。効率的で安定した流通システムの構築が喫緊の課題とされています。そのような中、株式会社農業総合研究所は2022年5月に国分グループ本社株式会社と資本提携契約を締結しました。國分晃代表取締役社長と、国分フレッシュリンク株式会社の御供講之代表取締役社長と、流通がつなぐ農産物の未来について話し合いました。

国分グループ×農総研の対談

伊勢商人をルーツにする創業300年以上の老舗

最初に、国分グループ本社株式会社のことを教えてください。

國分晃_弊社の創業は1712年になります。伊勢・松阪の伊勢商人だった四代目の國分勘兵衛が、いまの本社がある江戸・日本橋で「大国屋」という店を構えました。当初手がけていたのは、呉服業と醤油の醸造業です。醤油を醸造していたのは、いまの茨城県土浦市。そこから船に樽を積んで、利根川や江戸川、隅田川を経由して運び、本社があるこの場所で荷揚げをした後、江戸で売っていました。1880年には醤油醸造業を止めて、いまの食品流通業を本格的に始めています。
直近の売上高は1兆8814億円。約7割が加工食品と冷凍・チルド食品、約3割がアルコール飲料です。国内の物流拠点は常温倉庫が約200カ所、冷凍・冷蔵の低温倉庫が約100カ所。海外では中国とASEANに物流のネットワークを持っています。輸出先は60カ国に及びます。取り扱う分野は加工食品から冷凍・チルド食品、それからフレッシュへと広げてきたところです。

国分グループ本社株式会社 代表取締役社長執行役員 経営統括本部長 兼 COO 國分 晃

業界一丸となって協業する時代

食品流通業界を巡る現状をどう捉えていますか。

國分_直近でいえば、いわゆる「2024年問題」に正面から向き合わなければいけなくなっています。ドライバーの不足に燃料価格の高騰が加わり、業界を挙げてどう乗り切るか試行錯誤しているところです。ただ、メーカーと卸、小売りではそれぞれ思惑が違います。お互いの垣根を越えて、気持ちを一つにすることが大事です。

及川智正(農業総合研究所代表取締役会長CEO)_國分社長がおっしゃったとおりで、業界や企業が利益を奪い合う時代はだんだんと終わりを迎えていくのではないでしょうか。これからは業界一丸となっていい方向をつくらないと、外部環境の急激な変化には耐えられません。5年後、10年後という将来は誰も予測できないと思います。そうした予測をするよりも、むしろ大切なのは、望むべく将来に向かって業界や企業の間で協力し合うことですね。世の中がコロナ禍になり、インフラの大切さを再認識しました。我々は当たり前のようにガスや水道、電気を使い、野菜や果物を買っています。それができるのは、生産と消費をつなぐ流通があるからで、この仕事の社会的な意義はこれからますます大きくなると感じています。

株式会社農業総合研究所 代表取締役会長CEO 及川 智正

資本提携の目的はバリューチェーンの構築

国分グループでの青果物の取り扱いについて教えてください。

御供講之_国分グループとしては、各グループ企業の営業担当者が、個々に青果物を取り扱うことはありましたが、事業として始めたのは、生鮮統括部が発足した2012年からです。さらにこの年、青果卸をグループ化して、事業を本格化させました。現在は、2019年10月に国分グループの生鮮食品の中核企業として発足した私たち、国分フレッシュリンクが主に青果物を担っていますが、その取扱高は120億円ぐらい。ただ、弊社では顧客の要望に応じて野菜のカットを行ったり冷凍野菜も扱っていて、これらもフレッシュと呼んでいます。それらを合わせると、取扱高は500億円になります。

農総研とは2021年7月に業務提携契約を、さらに2022年5月に資本提携契約を締結しました。
その背景や目的、協業内容について聞かせてください。

御供_今回の資本提携の主な目的は、国分グループが保有する全国の調達・販売網、国分フレッシュリンクが保有する青果物の流通加工機能、それから農総研さんが保有する農産物の流通プラットフォームや物流ネットワークを相互に活用することで、バリューチェーンを構築することにあります。協業することで、物流や販路が拡大し、価値ある農産加工品を今まで以上に生活者に届けられると考えています。
いま決まっている協業内容は主に三つあります。一つは、消費地に近いところに物流拠点「東日本マザーセンター」を設け、運営することで、食品流通の効率化を図ること。二つ目は、業界の課題ともいえるコールドチェーンの確立です。三つ目はブランディング。これについては、農総研さんがそのノウハウを保有しているので、ぜひ学ばせていただきたいと思っています。

歴史と信頼の力を借りたい

堀内寛(農業総合研究所代表取締役社長)_今回の業務提携と資本提携の概要は、御供社長がいまおっしゃったとおりです。一つ付け加えたいのは、御供社長は両社が対等のようにお話しをされましたが、食品流通業界におけるベンチャーの弊社にとっては、歴史と信頼がある国分さんのお力を借りる側面が大きいということです。
及川から「業界一丸となって」という話がありましたが、それは、みんなでいまあるインフラをいかに効率良く使っていくかということ。そういう意味では、多大なネットワークとアセットを持っていらっしゃる国分さんのお力を借りる部分が大きいわけです。一方で、御供社長におっしゃっていただいたように、弊社はブランディングというソフトの部分については、いろいろな取り組みをしてきました。これについては、国分さんと協業しながら、お役に立てる場面を広げたいと思っています。

「ブランディング」は、生産者の情報を生活者に届けること

農総研でいう「ブランディング」とは何ですか。

堀内_弊社がいうところのブランディングとは、生産者がどんな農産物を、どこで、どんな思いを持ち、どんな風に作り、それはどのように食べると美味しいのかという情報を見える形で生活者に伝えることです。
生産者が作っている農産物はそれぞれがいろいろな特徴を持っていますが、多くの生産者はその価値に気づいていません。そのため、生活者が手に取った段階で、そうした情報が伝わっておらず、もったいないと感じています。
我々は、生産者に取材することでそうした情報を引き出し、生活者が手に取ったときに見えやすい形に作り直すことをしています。たとえば、店頭にPOPを置くほか、包装袋にQRコードを貼ってWEBページから生産者の情報を入手できるようにしています。生活者がそれを見たり読んだりして、良いと思ったら買ってもらえるわけです。そうした商品を選択する際の基準となる情報を発信することをブランディングと呼んでいます。
国分さんは「長期経営計画(第11次)」におけるビジョンタイトルとして「食のマーケティングカンパニーの進化~共創圏の確立~」を掲げていましたが、「共創」という言葉はとてもいいと感じました。生産者と生活者、そして弊社が一体となって共通の価値観を持てる商品づくりをしているという意味では、弊社のブランディングも同じですから。

御供_ありがとうございます。農総研さんとの取り組みもそうですが、協業するパートナーとは目指すビジョンを共有することを大事にしていきたいですね。

大消費地の物流拠点「東日本マザーセンター」とは

先ほど「東日本マザーセンター」のお話が出ましたが、具体的な構想を教えてください。

御供_関東地方の物流拠点といえば、弊社も農総研さんも東京都中央卸売市場大田市場に隣接する場所に個別に持っています。それらを一つにまとめた拠点にするという構想です。東日本マザーセンターについては数年以内に完成させる計画で進めています。
国分フレッシュリンクは、大田市場の仲卸でもあることから市場調達はもちろんのこと、市場外からも有機農産物を仕入れています。首都圏に大きなマーケットがある以上、大田市場に向かって多くの農産物が流通してきます。農総研さんとは東日本マザーセンターに限らず、互いに持っている調達・販売網を共有することで、食品流通の効率化を図りたいと考えています。

国分フレッシュリンク株式会社 代表取締役社長執行役員 御供 講之

国分グループと資本提携したことで、農総研さんではすでに反響はありますか。

堀内_資本提携をしてから、国分さんのお名前は伝統と信用が高いことを実感する機会が多くなりました。我々が独自に築いてきた販売網であっても、取引先からは「国分さんと提携したんですね」ということは必ず聞かれています。それで販売の機会が増えるという波及効果が出ています。今回協業することの一つに販売・調達網の相互利用ということがありますが、国分さんに信用力を付加していただいたことは大きいですね。

コールドチェーンの確立

協業の一つとしてコールドチェーンのお話も出ました。

及川_それについては私から説明します。既存の流通を見ると、主流である市場流通におけるコールドチェーンが不十分なのかなと。産地も市場もスーパーもまだ十分ではないと認識しています。昨今は気候変動が激しく、夏の温度が上がってきています。これからは温度管理に一層気を付けていかないと、お客さんを満足させられません。

堀内_コールドチェーンを作るには、生活者の口に入る直前まで、農産物の鮮度を保てる温度帯を維持するのが理想です。サプライチェーンを見渡すと、運搬段階ではそれができていることが多いのですが、産地や市場、スーパーは十分ではないと認識しています。農産物は適切な温度帯の施設から常温帯の環境に置いてしまうと、すぐに鮮度が落ちてしまう。そこで弊社は、「東日本マザーセンター」だけでなく、国分さんが保有している各地の施設を使わせてもらうことで、コールドチェーンを進めていきたいと考えています。

株式会社農業総合研究所 代表取締役 社長 堀内 寛

スーパーの売り場を活気づける

国分グループとして農総研に期待することは何でしょう。

御供_提案力ですね。スーパーは、青果と水産の売り場を活気づけることに苦労しています。人手不足や非効率な業務体制もあって、うまくいっていません。既存のサプライヤーも、そこまで介入できていない印象です。
スーパーの売り場が活気づけば、弊社にとっても売上が上がります。だから、販売企画を組むなどのお手伝いをしています。農総研さんはブランディングが得意なので、協業によるシナジーを発揮したいです。

相場を予測するAIシステム

国分グループでは相場を予測するAIシステムの開発を進められているとか。

御供_そうですね。大田市場やその周辺市場の相場、それに天候や産地情報を取り込みながら、2週間先の相場を予測するモデルをつくりたい。それによって何ができるのか、農総研さんと相談したいと思っています。

堀内_このお話を初めて伺ったときに、とても面白いなと思いました。各社が開発しているAIシステムは生育予測を踏まえることが多いようですが、国分さんのは株価のテクニカル分析に近いと感じています。農産物は需給のミスマッチが起きるから、値崩れするわけです。これを解決するには、相場を予測するのが大事で、面白いアプローチになるのではないかと期待しています。弊社でも使わせてもらえるなら、産地や農家へのアドバイスの材料にしたいと思っています。

最後に、両社から一言ずつお願いします。

國分_食品売り場は常温・低温・加工食品といったカテゴリーベースになっていますが、いずれは壁がなくなり、総合的に提案することが大事になっていきます。だからこそ、フレッシュの強化は喫緊の課題です。農総研さんとの今回の提携は弊社にとってもありがたいことだと受け止めています。

及川_本日はご縁を感じました。国分グループの出身である伊勢・松阪と弊社の本社がある和歌山とは、距離は離れていますけど、むかしは同じ紀州藩でした。それが分かって、とても良かったです。
歴史は続いているんだと思います。我々は創業して15年しか経っておらず、業界でいえば赤ん坊です。自分たちでできることはまだ少ないわけですが、一緒になればできることは多くなります。国分さんのお力を借りながら、もっともっとこの業界を良くしたいと思っています。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

相場を予測するAIシステム

商品紹介

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JRE MALL-野菜BOX

JR東日本グループが運営する「JRE MALL(ECサイト)」に出店している「農家の直売所 JRE MALL店」にて、当社が取り扱う和歌山県産の農産物を詰め合わせた『野菜BOX』を2022年6月28日に発売いたしました。当社創業の地でもある和歌山県の温暖な気候を活かして作られた新鮮で旬なお野菜(果物)の詰め合わせを全国の生活者に最短でお届けします。

商品の特徴・魅力

  • 和歌⼭の登録⽣産者約500⼈が出荷する農産物の中から当社スタッフが厳選した10品⽬以上のお野菜(果物)を最短(出荷から原則1⽇)でお届けします
  • 一般的なスーパーには流通しない珍しい野菜をセレクトしているので「自分では買わないものを食べられる」「料理のレパートリーが広がる」などのセレンディピティをお楽しみいただけます
  • いずれはTikTokやInstagramを活用して生産者情報や動画レシピなども一緒にお届けします
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産直卸-エシカルブランディング

当社が一押しする商品の魅力を“見える化”してお届けする「産直卸」事業の新たなブランド展開を紹介いたします。
「大きいものも小さいものも、〇〇さんの畑まるごとお届け」をコンセプトに、見た目もきれいな秀品やA品はプレミアム商品の「〇〇さんのご褒美〇〇(品名)」として、同じ商品でも形が不揃いの規格外品やB品はベーシック商品の「〇〇さんの“たくさん食べたい”〇〇(品名)」として、同じ生産者からA品もB品も畑をまるごとお届けする新たなブランド展開を始めました。プレミアムもベーシックも同じ生産者が同じ畑で愛情込めて育てた安心・安全で美味しい商品。プレミアム商品が高品質なのはもちろんですが、ベーシック商品は少しお買い得な上、フードロスの削減につながるなどエシカルな商品になります。

和歌山県産 しらぬい(不知火)

和歌山県産 しらぬい(不知火)

和歌山県産 せとか

和歌山県産 せとか
ポップ
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産直卸-富良野のしずく

青果卸売業者(北千生氣(きたちせいき)株式会社)が取り扱う夏〜秋限定のにんじんをブランディングした商品です。
北海道中富良野町に本社を構える北千生氣(株)は、にんじんの産地を富良野市、南富良野町、中富良野町、上富良野町に限定し、収穫から出荷までの時間を短縮することで高品質なにんじんの流通を実現しています。また、北千生氣(株)にはにんじん専任担当者「にんじんのプロ」がいて、生産者の畑にこまめに足を運び、種まきから収穫期まで連携。収穫は北千生氣(株)の「にんじんのプロ」が時期を見極め、一番おいしい時に傷をつけないようにていねいに収穫します。収穫した後は、大雪山の湧水で綺麗に洗ってAI画像認識により規格選別。温度管理を徹底した状態で遅くても収穫した翌日には出荷。
この付加価値を分かりやすくパッケージで表現した商品が「富良野のしずく」です。

トピックス

和歌山県にてコンテナ出荷の導入開始

2021年10月より和歌山県下にてコンテナ出荷を導入し、物流ルート・出荷オペレーション・出荷手数料を変更いたしました。その結果、物流コストの削減や出荷手数料収入の安定化に貢献いたしました。今後は他エリアへの展開も視野に収益基盤の強化に努めてまいります。


富山中央青果株式会社との提携の深化

2020年9月の業務提携契約に続き、2021年12月に資本業務提携契約を締結いたしました。両社の仕入先・販売先や人材などの経営資源の結びつきをより強固なものにし、青果卸市場を活性化することで、両社の売上と利益の向上を図ります。本取り組みの結果、当社から富山中央青果への販売額は前期の4.2倍に拡大いたしました。

「エキナカ 農家の直売所 in グランデュオ立川」が
期間限定でオープン

当社が運営する「農家の直売所」が2022年5月~6月の期間限定で駅構内に初出店いたしました。トラックによる輸送のほか、一部の商品はJR東日本グループが取り組む列車を活用した荷物輸送サービス「はこビュン」にて、長野県・山梨県の朝どれ野菜を立川駅構内に輸送いたしました。鮮度の高い状態での販売に加え、セルフレジ&完全キャッシュレス決済を導入し、農産品販売の新しい形を試行いたしました。

農直システムとは

生産者と生活者をつなぐ、農業総合研究所独自のシステム(サービス)です。農産物の栽培管理や販売支援など、生産者をサポートするシステムと商品の出荷情報や生産者情報、おススメのレシピなどが確認できる生活者向けのスマホアプリを展開しています。

産直流通とは

農業総合研究所の「産直流通」とは、独自の物流網とITプラットフォームを構築することにより、全国から生産者の顔が見える安心・安全で新鮮な農産物を最短(低コストかつスピーディー)で生活者にお届けすることです。