2024年10月04日 プレスリリース
流通が変える食と農の親密な関係/JA全農×農業総合研究所
2021年08月31日 メディア
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新旧の違いはあれど、流通から食と農の親密な関係を築こうとする全国農業協同組合連合会(JA全農)と株式会社農業総合研究所。業界の課題をどのようにとらえ、はたまた組織の壁を越えて連携する接点や意義をどう考えているのか。JA全農の戸井和久 チーフオフィサー(元イトーヨーカ堂社⻑)と農業総合研究所の及川智正会⻑、堀内寛社⻑が鼎談した。
生産者・生活者双方の情報が届いていない
戸井和久さん: 私は5年前にイトーヨーカ堂を辞めて、全農に入りました。それから半年間、各地にあるJAのリソースを見て回って分かったのは、出口対策ができていないこと。全農はそもそも生産者団体であり、営業力とマーケティングが弱い印象でし た。
マーケットインが大事と言われるけれども、生産者の情報を生活 者に十分に届けられていない。一方、生活者の潜在的な需要を吸収して、産地に反映することも十分にできていない。その反省に立って、これからはバリューチェーンを構築していかなければいけないというのが全農の考えです。
及川智正さん: 私はマーケットインで鍵を握るのは流通だと思い、会社を創業しました。じつは創業前、農業の生産をしていた んです。ただ、正直面白くはなかった。なぜかといえば、「ありがとう」と言われることがなかったからです。生活者と触れ合う機会がないんですね。
その時にもう一つ感じたのは、良いものができるほど貧乏になる こと。この「豊作貧乏」を解消できないかと、創業とともに始めたのが、スーパーのインショップで農産物を委託販売する「農家の直売所」でした。生産者が好きな金額で、好きな店で売れる仕組みをつくれば、いずれ「豊作貧乏」はなくなるはずと思ったんです。ただ、いまは「農家の直売所」だけでは「豊作貧乏」は解消できないと感じています。
堀内寛さん: それで弊社は2020年から「産直卸事業」を始めました。卸売会社や産地と連携し、スーパーを相手に⻘果物を仕入れ販売をするのです。といっても仕入れした⻘果物を単に卸すのではありません。スーパーからの要望を産地にフィードバックして、一緒に良い商品を作るというサイクルをつくっています。JAのブランディングもお手伝していますね。
産直卸事業は生産者にとってメリットが二つあります。一つは価格の安定です。特徴がある商品に価値を付けて、適正な価格で売れます。二つ目は販売率が上がるので、廃棄が減ること。生産者やスーパー、生活者に喜んでもらえるので、JAにとっても我々にとっても相性のいいビジネスだと感じています。
届けたいデータと気持ち
戸井さん: もはや業界挙げて敵対関係でいる時代ではないですね。とくに産地は小売業の変遷への対応がいつも遅れてきました。新たに持続可能性やシェアリング、デジタルトランスフォーメーションなどへの対応も求められる中、先に進んでいる人たちと組織を超えて一緒に出口対策をすべきだと考えます。
及川さんや堀内さんがおっしゃったように、価値を付けるには産地と小売りがベクトルを合わせることが大事。それにストーリーがないといけないし、そのためには営業が欠かせません。一方で生産者の心理としては、作ったものがどういう売り方をされているかを知りたいということがありますね。
堀内さん: たしかに「産直卸事業」に参加する生産者の多くがPOPを気にします。商品の売り方だけではなく自分や商品、圃場がPOPにどう表れているかを知りたいわけです。あわせて毎日の売り上げのデータも届けるようにしています。POPで着飾っても、ビジネスとしての継続性がないと意味がないですから。これこそが生産者に売り場を見せるということなんじゃないかなと思います。
及川さん: 私たちは会員の生産者にそうした情報を届けるITプラットフォームをつくっています。伝えることとして大事なのはデータはもちろんですが、もう一つは気持ちなのかなと。私たちのITプラットフォームでは消費者から生活さに「おいしい」「ありがとう」「また出荷してね」といったメッセージを届けること もできます。
「流通の六次化」での協業
及川さん: 私は業界のキーワードとして「流通の六次化」とよく言っています。流通が情報を活用しながら生産者と生活者の新たな関係をつくったり、需要と供給の調整を図ったりすることです。JAは優れたプラットフォームやインフラを持っていらっしゃるので、「流通の六次化」で協業できれば嬉しいです。
戸井さん: 全農も販路拡大をしないといけません。売り先が広がれば生産者も潤います。組織として全体よりもエリアでの対応が主流になっています。同時に販売環境も変化してきています。そういう意味では連携できることは多いと思います。
及川さん: コロナ禍になって感じたのは、我々は単に野菜や果物を供給するわけではなく、社会のインフラを構築しているということ。よりよい仕組みをつくるためにぜひご一緒させてください。
(聞き手/窪田新之助)
(撮影協力/一般社団法人 AgVenture Lab)
プロフィール
戸井 和久(とい・かずひさ)
全国農業協同組合連合会(JA全農) チーフオフィサー
1978年イトーヨーカ堂入社。同社で執行役員 販売事業部⻑、取締役常務執行役員 衣料事業部⻑、同衣料・食品事業部⻑、代表取締役社⻑(2014年5月〜16年1月)を歴任。
2017年4月より現職。
及川 智正(おいかわ・ともまさ)
株式会社農業総合研究所 代表取締役会⻑CEO
1997年株式会社巴商会入社。2003年和歌山県にて新規就農。
2006年エフ・アグリシステムズ株式会社関⻄支社⻑就任を経て、
2007年10月に株式会社農業総合研究所を設立し、代表取締役社⻑CEOに就任。
2019年11月より現職
堀内 寛(ほりうち・ひろし)
株式会社農業総合研究所 代表取締役社⻑
1998年住友商事株式会社入社。2007年6月ハーツリンク株式会社設立代表取締役就任。
2012年3月に株式会社農業総合研究所取締役に就任。
同取締役副社⻑就任を経て、2019年11月より現職。
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